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嬉遊笑覧
八方術
照々ほうし、不角が点の句に、てる〳〵法師月に目が明、〈願のかなひぬれば、墨にて目晴お書なり、〉紀逸が点の句に、八せんにてる〳〵法師はがきかず、漢土には是お掃晴娘といふ、蜻蛉日記、今日かヽる雨にもさはらで、おなじ所なる人、ものへまうでつ、さはることもなきにとおもひ出たれば、或もの女神にはきぬ縫てたてまつるこそよかんなれ、さしたまへと、よりきてさヽめけば、いで心みんとて、縑のひヽな衣みつぬひたり、したかひどもにかうぞ書たりける、いかなる心ばへにかありけん、神ぞしりてんかし、しろたへの衣は神にゆづりてんへだてぬ中にかへしなすべく雲雲、此作者兼家公の妻、道綱卿の母公の寵衰へたるによりて、これらの歌あり、此ひヽな衣、雨お祈ることとも聞えず、雨ふる日なれば、似たることのやうなり、