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古事談
三/僧行
自京方修行東国之僧、武蔵国に落留て、法花経など時々読てありけるが、国人と双六お打間、多負て身おさへ掛て打入畢、勝男陸奥へ将入て馬に替としけるお、熊がえの入道が弘めおきたる一向専修之僧徒聞、不便事也とて、各布お出合て請留としければ、此僧も悦入、勝男も以三百段雖可被請替、上人奉発憐愍令請給事なれば、半分おば不可取、今百五十段お給て可奉免也と雲ければ、念仏者輩も神妙也とて、已欲請出之間、念仏輩雲、此恩お思知て、自今以後可為専修也雲々、援此僧雲、縦馬の直となりて縄づらぬきて奥へは罷向とも、奉棄法花経、一向専修には不可入とて涕泣、依之念仏輩、然者不能請出とて忽分散、仍被付縄以追立、入陸奥方畢、