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催馬楽入文

一篇の総意は樗蒲などの大ぜりの博奕こそ国の大禁なれ、双六などの小糴(ぜり)、はあながち害にもならねば、その事の忘れがたくて、つら〳〵其具お打守るに、〓檀、珊瑚、柞(ゆし)の木の盤、牟些喰(むしはめ)の筒、犀角のさい、平賽(ひやうさい)、投賽(とさい)とかぞへゆくに、両面かすめ浮(うけ)たる、うき紋の盤の如く、うす〳〵われらも名ざしにあづかれど、こは切通しの盤の如く、上下一同の事なればいかにせん、これや此かなはめ盤の鉗(かなぎ)おはめられぬともすべもなし、たゞ五六がへしの一二のさいよ、四三のさいよと投うちて、心おやりおると雲なり、