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囲碁は単にごとも雲ふ、懐風藻に、大宝年中、僧弁正が唐国に遊び、囲碁せしことお載せたり、囲碁始て此に見ゆ、古来囲碁には必ず賭物あり、或は布帛お以てし、或は紙お以てし、又銭お以てす、其銭お指して碁手銭と雲ふ、後世徳川氏に至りて、物お、賭することお禁ぜり、
徳川幕府に於ては、碁所お置き、京都寂光寺中の僧、本因坊算砂お学げて之に世禄お与ふ、算砂は碁お善くするお以て、織田信長、豊臣秀吉の時、既に其寵遇お受けたる者なり、其後井上、安井、林の三家も亦徴されて碁所と為れり、
囲碁は、其巧拙に由りて階級あり、初段に始まり九段に訖る、九段お最と為し、是お名人と雲ひ、八段お半名人と雲ひ、七段お上手と雲ふ、初段に至らざるものは、皆素人と為す、
綴五は四目殺(よつめごろし)と雲ふ、彼我互に碁石お並べ、我四石お以て敵の一石お囲む時は之お殺し、其数の多寡お以て勝敗お決す、
格五は五目並(ごもくならべ)と雲ふ、亦互に碁石お縦、横、筋違に並べ、敵に先じて五箇連続したるお以て勝とす、