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太平記

三人僧徒関東下向事
昔天竺波羅奈国に戒定慧三学お兼備し給へる一人沙(の)門おはしけり、一朝国師として四海倚頼たりしかば、天下人帰依渇仰せる事、恰大聖世尊出世成道如也、或時其国大王、法会お行べき事有て、説戒導師に此沙門おぞ請ぜられける、沙門則勅命に随て鳳闕に参せらる、帝折節碁お被遊ける砌へ伝奏参て、沙門参内由(の)お奏し申けるお、遊しける碁に御心お入られて是お聞食れず、碁手(の)に付て截(○)と仰られけるお伝奏聞誤て、此沙門お截との勅定ぞと心得て、禁門外に出し、則沙門首(の)お刎にけり、〈○下略〉