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翁物語
前集十二
或雲、家康公と浅野弾正と碁おうたせ玉ふに、広間のえんに日影さしたるに、からかさおさヽせ玉ふ、弾正申けるは、本因坊助言お申上る間、うち申間敷と申、本因坊助言申間敷、笠おさヽせと有りて、本因坊御笠さして、家康御目の不行して大事の所の有つるに、本因坊笠おそろ〳〵と引て、大事肝要の所に、日のかげおうつして見せ奉る、家康公則時合点まし〳〵て、碁に勝玉ふと也、本因坊道にかしこきとて誉玉ふとなり、