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因雲碁話

本因坊道悦碁の問答
或人本因坊道悦と閑話の序に、碁の上手名人と雲ふには、如何やうにしてなるものに侍るやと問ひけるに、道悦答へに、上手名人といふ地位にいたるものは、其の人の生得の器用に侍る、大抵十人並の器用の者能く教へ、其の身も此の芸にはまりて能く勤め、数年お経れば上手にふたつまでの碁には、修行にてなるものに侍る、何ほどおしえ、その身もつとめても、上手名人といふには、其の器量の生得ならではなるものにてはなし、さるによりてこの芸おたしむもの多くあれども、上手名人といふは、むかしよりわづかなりといへり、