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因雲碁話

聖目の事
按ずるに、〈○中略〉局面九つ黒星お勢子の座とす、勢子の置き様図お見て知るべし、子は種なり、碁子のことなり、碁おうつ種なるゆえ名とす、勢子お定むる事、日本にもいにしへありしことやしらず、兼好が徒然草には聖目と書り、また俗に九つの黒星お井目といふけらし、予幼年の時、貴家の奥方にて、老女の囲碁お好むものこれありしが、其の言には勢子目といひぬかくのごとく伝へしところもありしと見えたり、勢子の座正字なれども、九曜によれば星目も義あり、井田の形によれば、井目も理なきにあらず、聖目ひぢりめは、実に僻字成べし、