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とはずがたり
碁おかこむものに目なし、かたはらにみるもの目ありといふ、たがはぬたとへなり、然るにこれは、おのれに求むる心うすくて、人おせむる心のあつきが上にやあるらん、弓いるものゝ、おのれにかへす心にはおとりたり、ある人碁おかこみたるに、いしおおろし、またあげて、こゝにやおかん、かしこにやおろさんと、かたはらなる上手にとふに、さればしかも、ありなん、かくもありなん、まどはしとこたふ、いなのたまへ、学びがてらにせんといへば、さりとて盤にむかはぬものお、わき目にはえこそわかたねといふ、この人は弓いるものゝたぐひなるべし、