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中将棊絹篩
それ中象棋は、盤面二八の十六目づゝ九つに分ち、これお九宮に配し、都て一百四十四目にして局おなす、これすなはち縦横各十二目なれば、十二支お以て合文とす、
駒数は、味方四十六枚、敵四十六枚、都合九十二枚なり、馬は取捨にて、小象棋のごとく、取馬お打事お得ざるなり、
成馬の例は、敵地へ入るとき成なり、もし素馬にていれば、三の手にて成なり、二の手にては成事お得ず、但し敵の馬お取ては、内地にてもなるなり、歩は敵地の口にて成る、素馬にて入は、二の目三目にはならず、四目にてなる、是は歩ばかりなり、
象棋さしやうは、小馬にて、大馬おおとすやうに心お用ゆべし、たとへば玉と獅子とに、角などかけておとすやうに、大駒お落すときは、おのづから駒多き方勝になるなり、〈○中略〉
つきおとしの勝とは、象棋さし出しより廿手過て、走馬王手に当りたるお、敵よりこれお見つけぬおいふなり、
馬のうちにて猶おそるべきは、獅子、飛鷲、角鷹の類なり、
獅子の喰添とは、獅子は味方の獅子と敵の獅子と、一目間につきあひても、敵の獅子につなぎ駒あれば、獅子にて獅子お取(とら)ぬなり、しかれども両獅子の間に何にても駒あれば、それお喰添にして、獅子にて獅子おとるなり、これお喰添と雲なり、但し歩はくひぞへにならぬなり、
互に獅子おうつといふは、獅子につなぎの馬あれども喰添にて、獅子より獅子おとらるゝとき、つなぎの馬にて敵の獅子おとるおいふなり、
先(せん)獅子と雲は、両方の獅子はしり馬に当れば、先手より獅子おとる、後手は其次に獅子おとる事お得ず、一手過て取なり、これお先獅子といふ、先手の徳なり、
居喰は、獅子、飛鷲、角鷹にあり、中にも獅子の居ぐひ甚し、獅子の居ぐひとは、獅子の廻りに有敵馬お、次の手にて取て、其座おなほらず居るおいふ、飛鷲、角鷹のいぐひも同前なり、
獅子かげのつなぎといふ事あり、はなれたる獅子お、つなぎあるかたの獅子にて、落すやうに獅子お出すとき、其敵獅子へ当て、手前の獅子までつなぐやうに、角行か竪行か、何にてもはしりお敵獅子のあとよりあてるお、かげのつなぎとて、獅子お獅子にてとらずひらくなり、