[p.0151]
川角太閤記

十五日、〈○文禄四年七月〉五つ時分〈○中略〉関白様〈○豊臣秀次〉は、竜西堂と御将棊被遊候処へ、篠部淡路奏者にて、福島大夫、池田伊予守、御使に被参候と申上候処、何事にや御意なり、け様に被成候上は、たとへ御中直り候共、此御遺恨はて申間敷と被思召候間、御切腹被成候へと両人申上候と、淡路守申上候処に、左もあるか、然らば此将棊は秀次勝の将棊かと被思召候、皆々見よとの御意にて見申候処に、如御意御勝の御将棊にて御座候、桂馬にてつまり申候に相究候、御取被成候駒おば、箱の身の方へ御入被成、竜西堂方へ被取候駒おば、蓋に御入させ、駒崩すなと御意候て床へ御上させ被成置候、〈○下略〉