[p.0153]
浚明院殿御実紀附錄

御晩年〈○徳川家治〉にいたりて、閑暇の御遊戯には、常に象棋おなされけり、その業の者にては、伊藤宗印宗鑑、大橋印寿おめして対手とせらる、御穎敏にまし〳〵けるゆえ、ほどなく奥儀おきはめつくし玉ふ、後には詰物といふ書おさへあらはし玉へり、詰物といへるは、老成堪能にいたらざれば著しがたきお、わづか一二年の間にえらみ玉ひしかば、その職の者どもゝおそれ奉れりとぞ、その書なりて、名おば成島忠八郎和鼎に命ぜられしかば、象棋考格として奉り、今も御文庫に現存せり、