[p.0176]
蜻蛉日記
中之上
なかのとおか〈○三月〉のほどに、この人々かたわきて、こゆみのことせむとす、かたみにいでいるとぞ、しさわぐしりへのかたのかぎりこゝにあつまりてなすひ、女ばうにかけ物こひたれば、さるべき物やたちまちにおぼえざりけむ、わびざれにあおきかみお、やなぎの枝にむすびつけたり、
山風のまつよりふけばこの春のやなぎの糸はしりへにぞよる
かへしくち〳〵したると、わするゝほどおしはからなむ、ひとつはかくぞある、
かず〳〵にきみがたよりてひくなれば柳のまゆも今ぞひらくる