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続世継
七/紫の由縁
このおほいまうち君〈○源雅実〉おこり心ちわづらひ給けるに、白川院より平等院の僧正〈○行尊〉おつかはして祈せ給けるに、おこたりたるふせに、馬お引給ける、大方雲しらぬ、あくめになん侍ければ、院聞しめして、吾こそふせもうべけれと、もりしげと雲しおつかはして仰られければ、有難物参らせんとて、武蔵の大徳隆頼がつくりたるこゆみの、ゆづかのしもひとひねりしたるお取出て、うるしのきらめきたるさしてすりまはして、にしきのゆづる取捨て、みちのくにがみして引巻て、にしきの袋にも入ず、唯みちのくにがみにつゝみて、奉られたりければ、いと珍らしき物なりと、立帰り仰られけるとぞ聞侍りし、