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投壺指南
投壺するには、毛氈お敷、其中央に候板(こうはん)お施、其上に壺お置き、矢筒(しとう/やたて)に籌(や)一手づゝ入、氈の端と壺との正中に、青竜の籌は東、白虎の籌は西におく、東西に中局計局ありて、矢算お執るべし、戯者出座して氈より二尺手前にて一礼し、進て毛氈の際まで出、両手にて矢筒お取、両手にて矢お抜、左の手に握り、左の膝の上に竪に持、右の手にて左の握居る矢お一本取、壺の底の所へかやうに置き、又其次に置、三本置てまた一本横に かやうに撞木状に置き、座おかため、矢お一本づゝ取揚、両方一礼して西より投出すべし、左の肩と右の肩と一整に斉ひ、身の動かぬやうにすべし、手お伸し尻お持上、肩お出すこと有べからず、矢壺の上五寸位にて、正直に立て入るにてなければ、真の中にあらず、矢の立やうに心掛べし、十二箭投終り、記錄に載、算数にて賢劣お定て又投べし、勝の事は賢、負の事は不勝、持の事は釣、一番お一壺又一競、一相手は一耦、一壺は短競、三壺は長競、負逃は更代など雲種々の名目あり、 負たる人は罰杯一壺に一杯も有、また一算に一盃、十算に一盃も有、 賢者は慶爵三番勝、二献肴有べし、 負たる人は綽興とて酒お飲ずば、謡にても肴とすべし、