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投扇式
礼式伝
通宝十二字お銀紙五寸四方にたちて包み、蝶の形に似せて玉簾の水引にて結ぶべし、十二字は月の数に表す、是お的玉と雲なり、
但即席には有合の紙にて包べし、本式の時は本文のごとし、
扇は十二骨の俗扇お用ゆべし、地紙は浅黄色にして、金銀にて散紅葉お摸様とすべし、
但即席は前に同じ
枕は常の木枕の寸法なり、是にも散る紅葉の蒔絵なり、或は梨子地黒ぬり等也、是お的台といふ、
但即席は前に同じ
敷物は猩々非羅紗或は毛氈等也、幅は扇丈にたち切て用ゆべし、是お投席といふ、
但即席は前に同じ枕と投席の間は、四季おかたどりて四扇お隔べし、投壺のごとく向ひ合て著座し、扇おかまへ、互に先投の辞義ありて投はじむる也、投る事都て十二遍にして満投す、隻かり染の玩といへども、三十一文字になぞらへ、勝負によりて褒美さま〴〵有、香のごとく記錄にのせ、百人一首の歌お書く業なれば、礼法おみだるべからず、
投席之図〈○図略〉
左右扇四たけづゝ下りてならぶ、投席のまん中に的台おなおすべし、的台の左右に執筆一人と的玉おなす人さし向ひて座すべし
相撲にして催〈す〉時は四本柱お用〈ゆ〉、図のごとし、〈○図略〉
四本柱太〈さ〉三寸、廻り長〈さ〉畳ぎわより屋根のきわ迄、扇二〈た〉たけづヽ、
屋根青土佐紙のるいにて張〈る〉べし、猶屋根障子は格好見合、
幕は紅白ちりめん布交也、はゞ三布にて四寸、丈〈け〉は四本柱の四方一〈つ〉はい、四本柱紅白ちりめんにてまくべし、
投席は前に有図のごとし
東西おわかち、関関脇小結前頭段々に定め組合事也、執筆の向に座し、的玉お直す人、軍配お上けて勝負おわかつ、則行司也、