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本朝世事談綺正誤
器用一
賀留多
多田夜話曰、かるたと雲は、梵語にて唐訳していふ時は、図と雲ことなり、絵図の書ある物といふ意にて、博奕の具に限りたることにはあらず、樗蒲と雲る博奕に用ふる札の名なり、ともに絵書にある故、かるたといふ、絵が付たなどゝいふ、能かるたの義にかなふ詞なり、これにては梵語のやうなれど、いづれもあしゝ、もとより完永の先にあること弁おまつべからず、また春湊浪話巻の一曰、かるたは軽板といふ言葉の略なるにやといへど、いまだし、おもふに和名類聚抄巻の四、雑芸類樗蒲、兼各苑雲、樗蒲一名九采、〈内典雲樗蒲、和名加利宇知、〉とあるおもておもへば、かるたは加利宇知の約たるとおもはる、宇知の反つなり、つとたとかよへり、さればかるたといへるものは、中国のいとふるくよりあるものと見えたり、その言の蛮語に似かよひたれば、僻説したるものならんか、