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貞丈雑記
八/調度
一歌がるたといふ物は古なし、近代出来たる物也、本は貝おほひの貝より思ひよりて作りたる故、本名おば歌貝(〇〇)と雲也、又伊勢物語に松明(ついまつ)〈たいまつの事〉の炭にて、歌の下句お書たる事ある故、歌貝も上の句に下の句おとり合するによりて、ついまつとも名付也、歌がるたといふは田舎詞也、かるたといふ物の形に似たる故雲なるべし、かるたと雲物は、異国より渡りたる博奕の道具也、歌貝も本は四角にはせず、将棊の馬形にする也、馬形にする事は、貝の形おまなびたる也、はまぐりの頭のとがりたるおかたどる也とぞ、又歌貝おばとると雲也、歌がるたおばうつとはいはぬ也、