[p.0276][p.0277]
後冷泉院根合
殿上根合 永承六年五月五日
題 菖蒲 時鳥 早苗 祝 恋
作者 左方 左馬頭源経信朝臣〈持一〉 権左中弁藤原資行〈持一〉 蔵人修理亮藤原隆資〈勝一〉式部大輔藤原国成朝臣〈持一〉 相模〈持一〉 右方 右近中将源顕房〈持一〉 右近中将資綱朝臣〈持一〉 右近中将源経俊〈持一〉 少納言源信房〈負一〉 良暹法師〈持一〉
一番 菖蒲
左〈持〉 左馬頭源経信朝臣
万代にかはらぬものは五月雨のしづくにかほるあやめなりけり
右 良暹法師
つくま江のそこのふかきはよそながらひけるあやめのねにてしる哉
二番 時鳥
左〈持〉 権左中弁藤原資行
ほとゝぎすたゞ一声に過ぬれば又まつ人になりぬべきかな
右 右近中将源顕房
うたゝねの夢にやあらんほとゝぎすまたともきかで過ぬなる哉
三番 早苗 左〈勝〉 蔵人修理亮藤原隆資
五月雨に日はくれぬめり里遠み山田のさなへとりもはてぬに
右 少納言源信房
小乙女の山田のしみにおりたちていそげやさなへむろのはやわせ
四番 恋
左〈持〉 相模
うらみわびほさぬ袖だにある物お恋に朽なん名こそおしけれ
右 右近中将源経俊
下もゆるなげきおだにもしらせばやたゞ火のかげのしばしばかりに
五番 祝
左〈持〉 式部大輔藤原国成朝臣
秋のそらいづる月日のさやかにもよろづ代すめるくものうへかな
右 右近中将資綱朝臣
春日山枝さしそむる松の葉は君が千とせの数にぞありける