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十訓抄
十二
行成は道風が跡お継て、めでたき能書なりけり、いまだ殿上人の比、殿上にて扇合といふ事有けるに、人々珠玉おかざり、金銀おみがきて我おとらじといとなみあへりけり、彼卿はくろくぬりたる細ぼねのたけたかきに、黄なるかみはりて、楽府の要文お真草に打まぜて、所々書て出されたりけるお召て御らんじて、是こそいづれにも勝れたれとて、御文机におかれけり、