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貝尽浦の錦
上/凡例
夫かいお弄(ならぶ)る事、古来は隻蛤の大なるお三百六十お集め、これおかざるに中お絹お以て〓(ねん)し、金銀お点じ、五彩の画おほどこす、六角の笥に納てこれお合お以て児女の玩とす、未もろ〳〵の介おあげ用ゆる事おしらず、元禄の始の頃より大に此弄おこりて、都鄙全く時行(はやら)す、賞鑑彖古人の貝およみおける古歌お取集て、四条大納言公任の撰び給ふ三十六の歌仙の数に配して、ついに三十六歌仙介となしてもてはやしぬ、其時歌お集る事ひろからず、不審なる引歌多し、因て其後これお考て、新撰の歌仙介世に行る事は、後歌仙集序中に見えたり、前後の三十六介となりぬ、今按るに、後に撰し方猶委し、取用べし、