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甲陽軍鑑
二/品第六
信玄公御時代諸大将之事
一武田信玄晴信公十三歳の御時、駿州義元の御前は信玄のあね子にておはします、此姉子の御方より母公へ貝おほひのためにとて、蛤おおくりまいらせらるゝ、信玄公お勝千代殿と申時なれば、御母公より上臘おもつて、此蛤の大小お扈従どもに申付、えりわけて給はれとの御事也、即大おばえりてまいらせられ、小き蛤たゝみ二帖敷ばかりに大方塞り、たかさ一尺も有つらん、是お扈従どもにかぞへさせ給へば、三千七百あまりなり、〈○下略〉