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嬉遊笑覧
十下/香
嗅 今鼻にきくと雲は、家語に、入芝蘭室、久而不聞其香、即与之化矣などいへり、故に真文伊勢物語には、聞おかぐと訓せたり、又旧本今昔物語、平の実文が事おいふ処、鼻にあてゝ閲けば、艶(えなら)ず馥しき黒方の香にてあり雲々などみゆるも、聞はかげばとよむべし、それよりして口語には、目のきく、手のきく、口きくなど、すべて一身に就ていはざる処なく広く用ひたり、