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薫集類抄

和合時節
賀陽宮 正月十日作之
山田尼 春、むめのはなざかり二三月、秋、蘭菊のかうばしき八九月、〈○中略〉
和合次第
賀陽宮 黒方〈沈一、甲二、麝三、薫四、白五、丁六、〉
滋宰相 先和沈丁子、次合甲香、次合白檀、最後和麝香雲雲、尚自可及多為令快和合也、
染殿宮 諸香合蜜之後、可和麝也、〈此説可秘雲雲〉
公忠朝臣 沈お母にて、次丁薫白、〈了あはひに〉麝香合次甲香、 又説、蜜合了之上麝香振懸雲雲、蜜合了以手にぎる也、加手成之、普一一振合為能、
八条〈大将承和秘方同之〉 沈甲麝薫白丁
朱雀院 沈丁甲薫麝
東三条院 沈甲白薫丁麝四条大納言 合香次第、隻以両数少物先入也、又以両数均対対合也、但麝香は最後合之、
小一条皇后 先沈丁子お合、次甲香お合、次白檀お合、終麝香薫陸お一度に合すと雲り、少より多に可及、快く為合也、
合和 和以泯泯為好 泯〈唐韻雲、弥忍反、弥賓反滅也、又動也、〉 知章朝臣口伝雲、以指推合香に指〈乃〉皴〈乃〉文〈乃〉付〈く〉程〈お〉泯々〈乃〉程〈と〉謂也、
国〓 和蜜程頗欲堅埋、則自有湿気雲雲、
大僧都完教 春之丁子、夏秋之沈、冬薫陸、随季三朱許可加歟、
山田尼 先、つめおきりて、手おあらひてつかみあはせよ、これはこどねり常生が説なり、手のあかいるとてもちひぬ人もあり、又雲、いまだかたまらぬによくさまして、ものにしたみいれて、かひしてすこしづゝくみて、かつ〳〵まはして、かたきかたなるにつきもていけばよき、煎じたるものながらいるれば、たりくるほどにいれすぐすなり、
或説 すゞりのはこのふたなどに、あつくうるはしき紙おしきて、それに香お次第にいれて、まつひとくさいれては、はまぐりのかいなどして、よくたび〳〵かきかへしつゝ、あまねくあはせて、又いれ〳〵、よくかきあはせて、すこしあらきふるひして、ふたたびふるひあはせて、あまづらにはあはすべし、あはせたるおりは、かうばしともおぼえず、丁子などの、かはやきおかきなれたるほどなるべし、廿日ばかりわすれてとりいでて、かくにぞかうばしきものなる、なつあはするはかたきよし、しるになる也、ふゆはしるなれども、又の日はかたまりぬ、くさ〴〵のものお火にたきたてかくに、くさくかゝるゝおば、いるゝかずにすこしたらさす、かうばしきものおばほうのごとくにいるべし、くさきものゝおほくいるは甲香也、
合舂姚家 諸香調和了、入鉄臼搗五百杵、
公忠朝臣 合和良久研黏、搗三千許杵、
随時朝臣 和蜜投鉄臼中、搗数以多為好、
国〓 先以諸香入大革筥、蓋和蜜能黏合了、入鉄臼搗千杵、
致忠朝臣〈東三条院同之〉 合香搗〈三千杵〉
知章朝臣 千度之内可舂之
山田尼 あはせつきのおりは、かなうす、きね、よくあらふべし、四両合には三千度、二両合には千五百度、一両合には千度、すくなきはとくつかるれば、かずおおとすなり、白きこはりきたるにてはこいりてあし、のりはりきたらん人のつくべきなり、
埋日数〈付埋所〉
長寧公主 埋三日
姚家 埋七日
極要方 盛白磁中、堀地三尺以上、用水辺之地得朝陽埋之卅日、
洛陽薫衣香方 入磁器、埋水辺陽気地、深八寸、七箇日之後出用之、
承和百歩香方 盛磁瓶中、埋経三七日取焼、百歩外聞香、
同御時 被埋右近陣御溝辺地、後代相伝、不変其処雲雲、或記雲、右近陣御溝詹下壇上雲雲、
賀陽宮 用唐磁器、堀露地深三尺許埋之、
八条式部卿宮 一宿埋馬矢下、件方伝得陽成院書雲々、
公忠朝臣 黒方、侍従、春秋五日、夏三日、冬七日、埋之梅樹下、
致忠朝臣 合香〈天〉後物〈に〉入〈て〉、花〈乃〉木の下土中高〈に〉埋之、知章朝臣 五葉〈の〉松下〈に〉可埋、春秋七日、夏五日、冬十日、
山田尼 茶埦のつぼ、もしはつきなどにいれて、ふたよくおほひて、そくいしてかみおおして、よくみづいるまじく封じて、梅樹のもとにうづむべし、それあめなどいりてながるゝもあしかりぬべし、花の木のしたのつちおものにかきいれて、うづみたるいとよし、又水のほとりみちのつじ、むまの矢のなかにも、ものにしたがひてうづむべし、あるひは十日、もしは廿日などうづめ、くろぼう、梅花などに木のしたにうづみて、春秋は五日、夏は三日、冬は七日ありてとるべし、士おほること二尺ばかりなり、