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源氏物語
三十八/鈴虫
院もあなたに出給とて、宮のおはしますにしのひさしに、のぞき給へれば〈○中略〉ひとりどもあまたして、けぶたきまであふぎちらせば、さしより給ひて、そらにたくはいづくの煙ぞと思わかれぬこそよけれ、富士のみねよりもげにくゆりみち出たるは、ほいなきわざなり、からぜちのおりは、大方のなりおしづめて、のどかにものゝ心もきゝわくべきことなれば、はゞかりなききぬの音なひ、人のけはひしづめてなん、よかるべきなど、例の物ふかゝらぬわか人どもの用意おしへ給、