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香道秘伝書
名香合儀、一番より十番迄二炷宛二十炷可通、人数も十人たるべし、然ば一人より二種宛香お可被出、其香に太子東大寺おば被相除、其外十種之内、又五十炷之内お可被出候か、むすびに二種通り候香之内、はじめたくおば左と定、後にたくおば右と定、左の香よきと思ふ時は、左の札お可打、右の香左よりもかほりまさりて覚ば、右の札お可打、札の調様ばゞ六分半、長さ一寸九分、又あつさ一分半に、杉の板おけづり、其面に我々の名乗お書、うらには左と一枚、又右と一枚可被書候、包紙おばうすやう一枚お八つに切て、其はしおほそく名紙にたちかけて、香の名お上書、其下に香主之名乗お書、四つにたゝみあげて、ひねりぶみの様に可在之、同紙の中に香おつゝみ候、おさあひ人の十種香とてもてあそぶ時のつゝみ候ごとく、何も口伝在之、去比於宅興行之時の験不可在失念候、総別昔香合と雲事不及聞候、三条殿御家にたき物合と雲事御興行候、其縁お取て興行仕度由、得尊意候処に、珠敷花に被思召候、後々迄名お残興行と御ほうみ被成、前後以御指南興行候、判者夢庵、ばつは三条殿に申上候、連座のうへは不可有失念者也、
右之一札写進入候事、別而無御閑宗温時より御懇志之儀と申、今度黒金方目聞お被仰聞故、傍以如此候、写本五十余箇条之儀は、他見候共、此書外見候ては可為迷惑候、
永禄元年 月 日 省巴