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香道大意
玩香は凡て炉お手に取りて鼻先にあてゝ聞くおいふ、此の玩香中に一種聞、焼組香聞、名香合、組香等の品々名目ありて、其作法各別なり、然るに組香お玩香中の猶下品なる物として、又此の組香の中にも真行草の三つありて、真の組香お厳儀の香と雲ひて、其の式お厳にするなり、是組香会の本式なる物にして、これは香道執心の人、組香皆点百度に及びたる上、師より香事一流の奥儀お伝授したる証拠に、連理香といふ組香お相伝す、是玩香の奥伝にして輒く為す所にあらず、故に此の香お焚く事は、其次第猶厳儀に執行ふ故に然雲ふなり、次に行の組香といふは、香元盤お用いず、打敷ばかりお用いて、其の上に香具お飾るなり、是は何れの組香お催す時の次第にすると定りたる事なし、其の席に臨める人に依りて、行にも真にも又するなり、即花月、焚合、連理香等お、三つの組香と雲ひて、諸の玩香中に分て秘事ある香なり、皆伝授ある物なり、連理香は前に雲が如く、組香皆点百度に及びたる人、一流の奥儀お伝受たる証拠に伝授する所、是香道に於て猶も大切なる事にて、素より其式次第お厳儀に伝授する事、前に雲へるが如し、其余焚合香〈焚合十炷香と雲〉は、則彼の連理香の面影にして甚秘事なり、花月香〈今これお真花月香と雲ふ〉は、香元二人花方月方と相分て焚、依て香具飾様も二け所にす、香元の仕様、其の他凡て秘事多し、右花月、焚合の二組は、件の故お以て行の式にて伝授するもあり、又貴人臨席の会釈ある時は、真の式お以て執行ふもあるなり、常には此の二組行の式お以てなすなり、草の組香は平常の十炷香、其他に用いる所の組香お焚くに、草の式お以て行ふお雲ふ、真行の二つに合すれば甚略なり、
真の組香は盤お居えて色の打敷お用いて、其儀厳重にするなり、行の組香は濃き花田の打敷お用い、草の組香は陸奥紙〈檀紙金銀箔、或は砂子模様、彩色画模様等なり、〉お敷て、其の上に香組の袋、又は凡の具お飾る事、其の用いる所の器物、及び執行ふ作法等に、詳略の差別あるお以て、右の如く真行草の次第お立たるものなり、