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古十組香秘考
古十組香総論
古十組香は、本書の序中に見へし如く、細川幽斎子の集め玉ひしものなり、十炷香はむかしよりありし也、宗温の書中に、おさなひ人の十炷香とて、もてあそぶ時のつゝみ候ごとくと雲文章あれば、其まへよりもありと見へたり、誰が組し事おしらず、其外の組も誰が組しや考べからず、本書の如く、十品に編しは、幽斎子に起れり、其むかしは此事あれども、筆紙お以て文章に写し来りしは細川氏なり、或人雲、これお十種香と雲、因て十種香の会、十種香道具など、俗に雲ならはせしも、むかしは隻此十組ばかりなれば、しか雲しとかや、さもあるべし、十炷香と書ときは、一つの組香の名となるよし雲り、すべて此十組は組香の濫觴にて、万の組香も是より出で来るものなり、米川常伯世に出そ後、香事一変す、十組香も古のもの組かへられぬ、源平お以て名所にかへ、郭公お競馬にかへ鳥合お矢数にかへて、家の十組となせり、今世上徘徊せる香道具、多くは此十組お入れたり、