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香道濫觴伝書
御家流(○○○)と称する開祖は、西三条内大臣実隆公、姓藤原、号消遥院、法名尭空、後柏原院御宇文亀年間之御香所、天文六年十月三日薨去にて、御廟所嵯峨二尊院に有、〈○中略〉百四代後土御門文明年間、西三条右大臣公敦、号竜朔院、公は実隆公御父也、百七代正親町院天文文禄年間、西三条右大臣、号称名院、公は実隆公御子也、御三代相続して御香所也、〈○中略〉実隆公よりして、香所御伝授油小路隆定初て地下に伝ふ、白川殿家臣猿島帯刀胤直、号天桂斎、往昔は臼井氏と名乗、此人に伝り始て地下に香の御家之伝来流下る、故に後世御家流と称る也、〈○中略〉香聞習ふ手段に組香お製し、初学の人の巻怠せぬため勝負に事寄せ、或は盤立物といふ物お製し、種々人形等飾慰る、猶茶方の茶歌舞妓の類也、皆香道に登らしめんの筌蹄也、