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御家流改正香道秘集
志野三道具之事
一志野宗信抔之時代、香具甚簡にし苦事少なき事也、香道世に行るゝより、火道具抔も事多なりて、七種の具となれり、今も其古風お用ひば、借に三〈つ〉にて事足べし、名香一種焼に用、また古来より之香盆の飾にも灰押香筋火筋なり、今も常に懐中抔に携るは、此三〈つ〉に而足り、又香箸お銀或は赤銅お以て作、先に細きぎざお付て、銀葉置取に仕、能様に作て、火筋とかね用てもよし、猶古来は寸法有、東山殿好也、左に図す、
香筋火筋兼帯之図〈(図略)長四寸弐分、かたち四方に作る、先弐分程の間ぎざ〴〵お付る也、〉
敷紙之事
一十炷香之道具お飾るには、敷紙お用べし、大鷹檀紙お弐〈つ〉折にして、又四〈つ〉に折用、開て飾べし、金銀の箔お押て用も有、然其白紙お用、折々あらたに取替およしとす、近来他流には香盤と雲る物お用なり、平日の香には紙お用る事古雅也、香盤お用るは真の時也、
さし札之事
一差札といふ物古来より有、象牙、烏木、或は黒漆にしたるも有、表に札の紋常のごとくに蒔絵抔にし、表に一二三四五と書置て、組香五炷有物に何れも用也、十炷香の時は、四おうとなし用、記錄へ一炷づヽに而しるし置、十炷終て後に本香包紙お開て記し、中に点お懸也、札十枚にて壱人に一枚づヽにて事たる故、筒なき也、又札之紋なしに拵置、色々之組香お聞、時々黒或は朱にて書替て、其組に順ひ用る事も有、左に図す、〈○図略〉
香屏風之事
一香屏風、寸法表裏のかた等、古来の式有もの也、風雨の節、または夜分寒気之節抔は、香席の廻りに立置、風お防ぐべき為也、広き書院抔に而は、別て用べきもの也、香気散じては聞分難き故也、寸法百け条に有、