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茶道要錄
下/賓法
茶之湯之起付掛物之事
一数奇之事、字書曰、一者奇也、二者耦也と注す、其文彩従大従可、俗作奇非也と見たり、又数之余零謂之奇、易大伝雲、帰奇於材以象閏となり、李広伝雲、大将軍陰受上誡以為李広数奇也、母令当単于、按に、単于者胸奴と雲て北狄主なり、是数奇の字義の解也、世の富賑と匆々たるお遁て、寒素にして聚蛍映雪、貧乏お楽み、山居して遣世慮者、世俗の眼より見時は、誠に人たる数の余零数奇者と雲つべし、数奇屋と雲も、是以推て知べし、数奇と連綿の字也、繫辞本義にも、奇者所揲数之余也と雲り、曾て聞事あり茶道は詫(わび)お本とす、故に茶具一色お数度に用ゆ、奇は一也、是以て数奇と雲と、大に異也、不可用数音主也、奇音鶏、従大従可、俗作奇非也、
一詫之字之事、音嗏、詫傺と続き、志お失ふの貌とて、我心の之所に任せず、事不足お雲、離騒の注に、詫立也、傺住也、憂思失意、住立而不能前也と雲り、傺音掣、止也、宋玉九弁曰、坎傺而沈蔵とあり、坎同窞、音坎にして物不足、故に自ら沈み蔵れ居也、