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北野大茶湯之記
一北野の於森、十月朔日より十日の間、天気次第、大茶湯被成御沙汰に付而、御名物共不残被相揃、数寄執心之者に可被為見御ため、御催被成候事、
一茶湯執心においては、また若党町人百姓以下によらず、釜一、つるべ一、呑物一、茶なきものは、こがしにても不苦候間、提来可仕候事、
一座鋪之儀は、松原にて候間、畳二畳、但詫者はとぢ付にても、いなばきにても苦力る間敷事、着所之儀は次第不同たるべし、
一日本之儀は不及申、数寄心懸有之ものは、唐国の者までも可罷出候事、
一遠国之者まで為可被見、十月朔日まで日限御延被成候事、
一如斯被仰出は、詫者不便に思召之儀候所に、今度不罷出者は、向後おいて、こがしおもたて候事、
無用との御意見事候、不罷出者之所〈江〉参候者も、同前たるべき事、
一詫者においては、誰々遠国之者によら命、御手前にて御茶可被下旨被仰与候事、
右以上
一番
一わたり茄子〈付赤盆〉 一あらみ御茶杓 一紹鴎台天目
一かねの蓋置 一青楓御絵 一なかそろり
一ほうろく釜 一柄杓さし桃尻 一紹鴎備前水こぼし
二番 金之御座敷分
一御茶入〈ひやうたん曲方盆〉 一しゆとく竹茶杓 一掛物墨跡
一花入かぶらなし
三番
一紹鴎茄子〈付赤盆〉 一ざうげの茶杓〈但しゆとく〉 一ふた置ごとく
一かねの御絵〈八ふくの内〉 一花入そろり円取 一釜こあられ
一水こぼしかうし 一柄杓さしくるみ 一白天目
御棚後
一四十石 大壺 一志賀 同 一御茶入 竜田一同めんはく 一おりだめ茶杓 一てうさんの御絵
一備前筒の花入 一やせかけ天目 一かねの水さし
一釜おとごせ 一かめのふた水こぼし 一ほそぐさり
宗及請取分
一大壺なでしこ 一御絵枯木 一茶入はつ花
一あまこ天目 一かうらい茶碗 一おりだめ茶杓
一竹の蓋おき 一水こぼしめんつう 一釜入道くも
利休請取分
一大壺 捨子 一御茶入ならしば 一ぬり天目
一高麗茶わん 一おりだめ茶杓 一水こぼしたこつぼ
一竹のふた置 一雁の御絵 一かねのつるべ
一せいじの筒 花入 一御茶入 尻ふくら
宗久請取分
一大壺 せうくわ 一御茶入〈曲方盆しきかたつき〉 一釜 うば口
一はかたいもがしら 一みしま茶碗 一おりだめ茶杓
一竹のふた置 一水こぼしめんつう 一月の絵 牧渓
左座之方
利久 民部法印 茶院 紹安 宗安 円乗坊 大納言殿 少庵 日野殿 古渓和尚 水野惚兵衛殿 稲種与八郎殿 山崎志摩殿 羽柴下野殿 長谷川宗閑
右座之分宗久 三枝松 宗及 長岡玄旨 羽柴筑前守殿 羽柴出羽守殿 富田左近殿 羽柴監物殿
津由隼人殿 羽柴左衛門殿 巻村兵大夫殿
天正十五年