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茶道筌蹄

茶会
暁 七つ時に露地入するなり、当時は七つ半なり、前日黄昏に露地へ水お打、灯籠並待合行灯まで火お入れ、暫して火お消し、暁七つどきに火お入る也、或人の雲、通草(とうしん)お宥に消したるまゝにてかき立て火おともすれば、残灯の趣有て一入風情あるよし、偖釜は前夜より仕懸置、客待合へ来るとき、炭お一つ二つ加へ、手水鉢の水お改め、迎ひ入るゝなり、偖生姜酒ぜんざい餅など様の物お出し、薄茶お完々(ゆる〳〵)点て閑話おなす也、薄茶済て底お取、釜お勝手へ持ゆき、水お仕かけ濡釜にてかくる故、板釜置か竹釜置お用ゆ、しかし水おみなみな仕替るときは享おそき故に、少しばかり水お仕替るがよし、偖炭手前済て膳お出す時、突上〈げ〉お明〈け〉行灯お引〈き〉、夜もほの〴〵と明るが至極の時刻なれども、余りにけぬき合とせんとするはよろしからず、膳お出すに席も暗ければ、行灯おくり引にそろ〳〵と引べし、猶また座中ほの暗くあらば膳お出すに、汁は何、むかふはなにと、亭主より名乗るもさびて面白し、小間にて突上〈げ〉窓の下へ参りがたき時は、末座へたのむべし、突上げなき席は、連子の戸お障子と仕替る、是も客へたのみてもよろし、偖中立までは随分ゆる〳〵となすべし、中立後は随分さら〳〵となすべし、客もつゞきなど乞ふもよし、