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茶道望月集
二十二
一昼の茶事、昔は別に雲ごとく茶事の楽しみ深き故、口切の比は、大かた好士の人は、夜おこめて行迎へて楽みし事なれども、当時は茶事名聞にのみなりて、春夏は打捨置し人も、十月中旬より思ひよりて、口切とて茶事催する事になれり、夫故夜込の仕かた各別の習事になりて、道しらぬ人はこと〴〵敷雲なす故、少し心得たる人も、我しりがほに適々夜込の茶事おする人、聞はつりたる仕かたにて、彼世俗の雲、耳お取て鼻おかむ様の事お取合て、是こそ夜込夜の会釈習など、初心の輩に雲聞す故、常に馴ぬ事故、いか様左様にてこそあるらめと心得たる事はなけれども、たま〳〵夜込の茶に招れ行し輩は、互に其仕かたお隠し合て、打過る事になり来りし故、愈其道せまく成て、たゞ書の茶事のみの様に成ぬ、