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茶之湯六宗匠伝記

雪之茶之湯之事
一雪之茶之湯といふは、初雪の事より伝授故、あらわには申がたし、第一雪は十月比初ゆきふる也、雪ふる朝茶之ゆ者は、我が方に炉に火入、茶おしかけおき、雪お見て歌およみ詩お作、常の習とす、釜お仕かけおけば、おもふどしの人、見舞にくるなり、是および入、雪ごと雲て珍敷存候、それ故に釜おしかけ置申とて、うす茶おたつる也、我も呑仕舞申候、其とき客、さらば我等詫へ御同道可申とて、先へ出らるゝ、てい主釜仕かけ置往時、道すがら木々の小ずへにゆきのかゝりたるお見て、雪ごとおほめつれ立往ば、ほどなく向へ付たり、そこにて又薄茶呑などする内に炭おする也、さて料理出し、酒も能かげんにのみ、湯出ると茶菓子喰、手水に立て、どらなると床敷舎内に茶具紊あるお、如常みて座に付お、てい主出て濃茶おたてらるゝ也、総菓子迄くひ客立なり、是お雪茶之湯之大事として、印可条々内也、