[p.0419]
茶之湯六宗匠伝記

月之茶之湯之事
一月は何れもあれ共、分て秋八月十五夜お名月とて、詩にも歌にも賞玩する也、又九月十三夜の月お名月とて、分て茶之ゆ之時は大事印可習也、名月之夜はざしきに習有、月お賞玩故、床にも花も掛物もかくることなし、炉に釜かけおき、扠月よくば、腰掛に円座お客之かずほど敷おく也、扠客よび入、でい主水こぼし持出、先〈つ〉薄茶おたつる也、此ときは座に火不出、勝手にたか〴〵とらうそくお立べし、其あかりにて茶おたつるなり、客三人あらば三服たてゝ、一服はてい主呑べし、其後うす茶おしまひ、扠炭入持出て、すみお如常する也、其時はらうそく持出べし、扠夜食お出すべし、夜食済に手水に立べし、扠数奇屋へ入濃茶たつる也、総くわし出し、礼雲立也、是も印可之大事なり、常のしかたとは大にちがい候、印可け条之内也、