[p.0425][p.0426]
南方錄

壺口切之会 火相之事 香出す事 茶の服心用之事、茶入心用之事、初入掛物かけて前に壺かざるべし、草庵体の口切は火相お心得べし、火お強すべし、客座入あらば主出て一礼済、早々挨拶して壺おさばき、壺お客より請て見る事勿論也、口切の時は大方はだか壺に口緒口覆まで可然、口緒も半切のたやすきが能也、手ばやにさばく事本意也、見物済て道具畳に直し、封おさらりとしるし計に切て勝手へ持入る、封の切様、前の印より小刀おはじめ、三刀に切事口伝有、壺室のふたお出して見する事有、凡夫にも不及、香炉抔出して、待遠になきはたらきすべし、主は茶批判してひかする、扠程お見合せ、炭おして懐石お出す也、中立等別儀なし、総而坐おゆる〳〵とする心得なり、又火相に依て、先炭おする事ある時は、懐石の間見合て炭お すべてよし、功者の客程、火相に心お用て心いそぎする故、炭加へ候へば、客落付て心閑なるもの也、坐お延す事は、香には不限、主力心持次第也、後坐の配合、水指に茶碗計有べし、茶入は小棗渦棗の類、又土物茶入も小きがよし、茶漸々引出来したる心也、服常よりも薄くして、能振たてるよし、湯相も雷鳴の峠、いかにも強火相肝要也、壺客衆見物の時、こかして出す事、名物に限りする事也、名物は底に名又は判等有との故、こかして出す、常の壺はこかして出す事惡し、