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槐記
享保十一年霜月十二日、参候、先日何某が茶に参りたりしに、後の出に亭主茶椀と羽箒とお持出て、炉ぶちお一遍はきて入て、こぼしひさくお指出たり、珍きこと、終に見ざりしことに候、これあることにやと申上る、仰に〈○近衛家熙〉いさしらず、後に羽箒お持出ることはあること也、口切冬の茶にはきかぬこと也、冬何とぞ口切に呼ばでかなはぬ人とか、口切に冬の約束の延て春になりたるときは、諸事みな冬のあしらひなり、炭取もふくべ、炉ぶちも黒ぬお也、其時は茶碗羽箒お持出て炉ぶちお犬く、是お炉ぶちのあしらひと雲、冬はしらぬこと也と仰らる、