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客之次第
一ちや給るべきの状うけたる時に、忝候可参と返事に、状之表其位々に慇勤に書て、忝奉存候、必御参可被下と、此必と雲事お文章に書べし、これ数寄之大法おしれるなり、さて則礼にまいるなり、ていしゆも出合てあふ事よし、対面の時、扠御客は誰、たれ様ぞと尋て、正客大名高家ならば、則その大名へまいりて、御光儀により御相伴に被仰下候間、被召寄候はゞ可参由御礼申上る事なり、同輩の人ならば、状にて可申遣なり、拐すきの時刻に成て、大名ならば、よりつけ迄又行て伺公仕たる由申入る、さきへ参相待可申旨被仰出る事なり、又大名とても位によつて、案内なくさきへ行て路地に待申事もあり、同輩の人ならば、いかにも別に路地口へゆきて待事本なり、とかくおそく行事あしし、〈○中略〉
一数寄約束して、雨ふり雪ふりはげしき天気あるに、亭主より数寄おのべ申べきと申遣事大法なり、客は一、入雨面白候、必々参るべしと返事する事本なり、