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細川茶湯之書

一当世の万民、はやる事として、しるもしらぬも数奇と号して、茶の湯座敷おこしらへ、大名高家老若共に、懇切おあらはさんため日限おさし、或は不時客人お申入といへ共、初心の者は数奇におそれて虚病おかまへ、斟酌するもの多し、数奇にて呼にて、呼るゝ義は、別而懇切なれば、忝と存参べし、作去少も不知ば、不審在之べき事也、但さりがたき用所あらば、其子細委敷ことはるべき也、いやあふの返事慥に申べし、有無の返事あきらかならねば、亭主心元なく存るものなり、相手にはよれ共、大略自身参りて一礼申べき事なり、
一礼状遣候か、自身参て一礼申時、相客衆おとふべし、相客しれたらば、其相客人直談か、しからずば書状、日限遠くは用意仕るべし、