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茶之湯六宗匠伝記

千利休宗易居士自筆
一客来りてくゞりの前にやすらふ時、能時分おうかゞい、亭主くゞり戸おひらく、時宜お互にして、くゞりの敷居など、のごひなどして、くゞりの戸お立、少開掛て亭主は内へ入べし、くゞり開て亭主と客と時宜過て、客に衣御取候へと雲べし、其時亭主と客との位に依て、客の衣肩衣など取事もあり、とらざる事も、客に依、亭主の位高く、白衣にても御出有べし、大形は其身によりて、肩衣成共善七て、亭主も取べし、〈○中略〉
一亭主くゞりの口おしめて内へ入候共、客其儘くゞりお開き内へ入べからず、其子細は亭主は前に気お付、路地の失念に心お入て吟味する物也、少相待、亭主の内へ入候半とおもふ時分おうかゞいて、路地の口お開きて入べし、此くゞりの口お入に、大事の心持あれ共、委細は書付がたき也、
一くゞりの外にての座配の時宜は、亭主の出ざる先にもすべし、又亭主くゞりの戸おしめてよりも不有苦、時の仕合仕第、
一客次第々々路地に入て、飛石其外植木何も気お付ほむべし、余り物知顔は無益也、又功者顔、高声にほむる事もおこがまし、分別してほむべし、