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草人木

一釜すへ終て、亭主勝手へいり障子お立置也、会席出来せば出すべき時、高位の客ならば本膳おば亭主すゆべし、御相客には御前の小性衆お頼むが本也、亭主のすゆる事もあり、貴人高位主君などの御出の時は、給仕には本小性お頼み、又勝手にては御内の包丁人お頼申べし、いかに亭主の振舞といふ共、右の御客の時は、よくてもあしくても、献立は御意に参様に御内衆に任すべし、
一客と亭主と同輩ならば、何もの膳お若衆に給仕頼ても苦しからず、其中二三度程亭主出けうたいあるべし、其時にはより候へ共、中酒の時か、引菜お持てか、今一へん酒おしひ給ふ時か、又は菓子お持てか也、高官の御人、無官の者に御茶被下候はゞ、御使にて座敷の興お仰られしは忝物也、まして一度も直に御意被成は、猶有難き御事也、
一菓子と茶うけと別に出す事もあり、又ひとつに組合て、めん〳〵に出事もあり、総菓子とめんめん菓子との義也、〈○中略〉
一面々菓子の台ならば、立ざまに菓子入お重而、勝手ちかき所に置べし、此仕舞は下座の人のしたるがよし、
一菓子過たるとて、客はやく立べからず、亭主も勝手にて身のつくろひおし、茶具おこしらへなどする、其程ありて立べし、