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南方錄

中立の時火相心お用る事 夏冬別有事
菓子仕廻て、菓子盆お給仕口の際へかさね置、台目に行て、棚お見廻し、火相お考へ、掛物おも今一度疾と見て、躪上りの口お開て出べし、火相お考へて出る故、火移り早時は、茶案内あらば其儘坐入すべし、火移り遅ときは支度して待べし、火移早過たらば、たがひに手水つかひて待もよし、中立の後火移早過れば炭おさし添、又火お減ずる類の事、大成本意の違也、火相湯相の遅速お考へて、露地出入し、松風雷鳴の的然に、一服の茶お点じ喫してこそ茶湯の出来たるとは雲べけれ、扠火相の考へ、賞客末客専心お用べし、中坐の客とても火相不考と雲事にてはなし夏は懐石後炭おするゆへ、中立も緩々としてよし、