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客之次第
一数寄屋へ入やう、同見やう、前におなじ、又ほめやうは、あまりにむざとほむる事あしく候、又ほめざるも猶あしゝ、掛物花のほめ時分は、掛物は達摩にとへ、花はうす花の時と古実の習なり、中立より前は多分掛物なり、むざと物おほめまはししては、亭主の手前しまひにかまひ、やかましく侍る故に、まづ物しづかに亭主のしまひお見て、炭も入、くわんすもすへてくわんおぬかんとせらるゝ時分に、見事成御掛物、扠かれこれとほむるなり、達摩の耳にくわんあれば、達摩の時とは心得るなり、
一此くわんお掛、くわんすおなおして、何とろくに御座候かと、亭主客へ尋る事、是時のあひなり、一段ろくさうに御座候と雲てよし、亭主すねものにて、くわんすお少ゆがめ置て客に尋る人あり、ろくさうに御座候といわせず、まして後にろくになおせり、然時は客のけいはくに成候、少ゆがみ申候といへば、ていしゆのきよくなし、其時は隻一礼の時のやうにあひしらふ物なり、