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客之次第
一茶お三すくひほど入、茶入のふたおとらんやうにする時に、客より御茶今少一両度も所望する事よし、亭主はしんしやく心に、茶入お引、ふたおとらんとする体なり、
一茶は一へんにて、のこらすみなのむべし、二へんまはす事有べからず、ていしゆもずいぶんのこらぬやうに、小服に立出し申に、のみあまし申義は、以之外の不調法也、初に今少茶御入候へと申たることは、みなけいはくに成申なり、よく心得べき事なり、
一のみじまひて、下座の人其茶わんお上座へわたす、是によつて手ひまなきゆへに、下座より二番目の人、ふくさおとつて茶ばかりお下座へ渡し、下座の人茶おのむ内に、ふくさお亭主へわたすなり、
一上座の人茶わんお請取て、香おきゝ、色おほめ、たてやうの茶わんの内おほめ、茶わんお見などして、其次へ渡、其教々の人も同前に見てほむるなり、扠下座の人、又上座へ茶わんお渡すなり、上座の人また少見て、亭主の初出したる所に置なり、
一茶おのむに、上座の人ののみたる其のみ口おちがはぬやうに、其次々の人も、其のみ口よりのむ事肝要にて、亭主じまんして、茶わんの内きれいにたてなし出したるお、方々よりのみちらし、さん〴〵のたてなしになして、あゝ御茶たちて候と申さるゝは、亭主おきよくれるしかたなり、茶のいきも方々よりちりさんじて、よしともあしともいひがたし、うつくしくきれいに、一所よりのみ口こまやかにある所おむかふへなして、香おきく事なり、むかふへなしぬれば、のみ口の方上になるに依て、茶のいきも上へあがり、能いきもきこへ候、前になし、我はなお茶わんの中へのぞき入れば、あせやいらん、はなやいらんと、人目には見ぐるしくて、お上がいに茶のいききかせたるに成候なり、
一亭主茶碗お下に置、湯お入、水おむめ合て、二口三口のむ事なり、其時も客そと礼すべし、此時亭主のむ道理は、茶に毒などの入たる事もあり、其時宜と、一は又後うす茶の時、水のむめかげんお見んためにて侍るなり、