[p.0465]
客之次第
一立炭は、多分は亭主炭持て出で入るもあり、又客より、とてもの御事に立炭被遊候へと雲もよし、亭主は炭の用意も無御座候、今少御くつろぎ有て、御あそび被成候へと雲時宜なり、客いかに御用意の無御座事の候はん哉、隻被遊候へと、再三にこふ物なりもちろん用意したる事なれば、則亭主炭せられば、そこ御とり候へとろのそこの火おとらせておかせる物なり、扠炭おおかるゝ時、各さし寄て見物すべし、又亭主炭持て出て、客にちと御慰に炭被遊候へと所望あらば、再三しんしやく有べし、客めいよの数寄しやなどにて、慰にいれんとおもはれ候はゞ、さればいれ申べきかとはいわぬ物なり、まづ釜おあげさせられよと雲なり、是則いれんとのすき道のことばなり、扠亭主釜おあげて、炭所望の時客すみ入べし、客大名か数寄無双の人ならば、御相伴の中より、御取合お申などして、まづ釜おあげさせられよと、相伴衆一人雲もよし、
一炭の後、釜お客かくる事もあるべし、又立のき亭主に釜はかけさするもよし、亭主は炭に見入て、釜いつまでもかけぬ体よし、然間炭の後、亭主に向て釜かけさせられよと雲時宜、猶ある義なり、