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草人木

一立水訂事は、薄茶過て炭の節打也、又薄茶の前に炭あらば、薄茶の内に打べし、此立水といふことお近き比仕出し候也、其已前はかつてなき事也、由来はおくにあり、
一帰宅の時は、座敷にてたがひに礼おいたして、亭主は勝手へ入、障子お立べし、客立様に、床の内と棚などの物の置合お見べし、
一路地へ出たり共、にげ口の様にすべからず、置たる道具共失念なき様に、万の置目ちがはざるやうに、跡にて人にわらはれぬやうに、たとひ水打に出たる男共のしわざ成共見て、惡き事はなおしてかへるべし、くゞりの口おば本より跡より出る人戸おしめて、初のごとくに亭主の出る迄はならびいて、しづかにたがひに礼おなすべし、いかに心安き中成共、取わき客方は謹忝体おなすべし、終日のくらうは、たがひの身に覚あるならば、かへす〴〵客かろく礼おなすべからず、