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和泉草

高位高官之御方茶湯一公方の御茶お立るおば、御天目茶筌茶巾迄も棚の上に置べし、御相伴の諸具、棚の下に置物也、御茶調時、柄杓に残る湯釜へもどす、御相伴衆の湯残らぬ様に汲物也、
一茶湯、極真と、真と、草との差異有り、或大名御門跡などの御茶湯は、木具七器金銀の鬼足縁高など可然也、
一御飾も床に掛物、或盆香合香炉、台子の上に茄子の丸壺、文琳か天目台など有べし、
一棚に釜水指置時、一寸四五分向へ寄飾、口伝也、
一棚の下は必四つ組也、真の釜風炉に掛、水指銅南蛮、熟柿色吉、古銅の柄杓立、くるみ口、鉉口の間吉、合子は唐金のかな色吉、四つ組の時、蓋置風炉の方に置也、
一如此御茶立様、如何にも真にしつして、如作法慎て立る物なち、珍敷仕合取出べからず、一御人体の御茶湯なれば、別人御茶立候也、
一以前極真の時は、一座の物語も実なる吉、飯の喰様、菓子の用様、楊枝遣様、茶の呑様、以上公家方の仕付の挫治にしつして吉、
一座席の広狭、貴人の御茶湯六畳鋪相応す、御相伴も少間お置著座有故也、高位高官の外は四畳半も吉、
一座鋪の様子、無異風結構になく、さすが手際能目に立ぬ様吉、第一其人に相応有べき儀也、老人貴人富者は真に構て吉、少年壮年貧者詫は草に構て吉、
一庭の様体、石不立砂まかず、諸辺脇へ目のうつらぬが吉、御茶情お入、名物に心お付しめん為也、一次の間には、手水所の辺に青々たる草木少し有て吉、炉辺座中に居る上、気お晴し窮屈おも延ん為也、廊下の外小便所、其外奥に雪隠有、て士隻貴人の御来儀になくて不協物也、平生用おかなへず、さはやかにして用る也、一貴人兼而より招待するには、瀬戸天目成共、新きお用て吉、
一貴人御来儀の時、御膳夫一人勝手へ呼入、試なせるもの也、
小座敷へ被為入、御腰物床中へ上て吉、御身近御家来一両輩置て吉、門外に亭主の方の番士二三輩置て吉、次の間には硯料紙御手水の道具置、御枕、御衣桁、はんざう、手拭置也、
一御前には古囲炉裏なし、火鉢に釜お掛たり、御茶は何時も台子也、
一真釜にて茶立る時は、柄杓の柄さき、三ふせも、手一束も出す、囲炉裏の平釜の時は、柄先少し出す也、
一拝領の物は初座に飾て吉、頂戴の仕様、諸具品々有之べし、筆にも不被尽所也、口伝、