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茶道望月集
三十二
一近衛応山公〈○信尋〉初而宗旦の小座敷へ茶事に御成の時、宗旦は御会釈は、御迎何かは能慎て、小座敷の茶事は如常御会釈申時、御茶済て御尋には、茶事に台天目にて点る事有と聞、夫は如何様成時する事と御尋有しに、旦御請に、同輩の主客の時は、名物の台か天目所持の者、其道具に付て会釈、又其御客貴高の御方なれば、御客へ対して、新敷茶碗、新敷台にても台天目にて点る事有之候と申上る、其時又夫は如何様の貴人への時、する事ぞと御尋の時、御前のごとく成貴客の時仕る事に候へども、今日け様の折は、此茅屋お一興として御成被下候時宜に候へば、茶道の徳お以、尊卑不相隔の道義お以、御会釈申上る故、常の草の茶事お輿に御会釈申上る事也、後刻広座敷へ御成の時、薄茶は台天目にて進上可申と申上る時、甚御感心と也、如此の心持なければ、慎としても茶の本意お失ふては益もなし、能々工夫可有、如何様の貴公の御方にても、御客の器量による事、茶道御功者なれば、とかく其期に臨て働お第一と可知也、