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貞要集

数寄屋外内路次入客亭作法之事附礼義之事
一貴高の御相伴にまいり候節は、其身おあらためたしなみ、待合にまで御先へ参居可申候、御客揃候時、亭主御迎に出、中潜敷居に手お掛、御挨拶ありて、手巾にて敷居おふき戸お立る、一二寸明て置也、また主君などへは、中潜より外へ出て、御挨拶申事本意なり、扠上客中潜の内へ御入候と、次の御客に構申さず、引つゞき内へ入、砂雪隠の戸お明け掛御目、路地の内植込飛石等誉申す御挨拶仕り、手水の前へ御先へまいり、中腰にて柄杓お取、御手水掛け申候、此時あたらしき手拭、紙に包、封して懐中にたしなむべし、若手拭御用達可申ため也、御手水済して御跡につき、隣上り際へ参、御腰の物おうけ取、刀かけに大小掛、躪上りより御入候と、御草履お直し申候、それより御相客段々に御入候うちに、手水お遣、刀掛の下可然所に、自分脇ざしおぬき、小尻の〓に鼻紙四五枚四つ折にして敷、脇指立かけ置なり、扇子はさして入たるがよし、茶入の蓋お載せ、或は塵雉も払ふためなれば、下座のものかならず持て入べし、担隣上り敷居に手おかけ、内の様子見合躪上り、蹈石の脇に草履蹈揃上り申候、立返り草履お直し候へば、貴人お後に成申候故、はき捨置也、床のかけ物大目のかざりも見不申候、しかれども貴人見申様にと被仰候時は、床前の脇より掛物のぞき見て、道具畳へうつり、かざりお見申候、貴人御傍通り申候はゞ、腰おかゞめ目に立ざる様に可嗜、料理出申候ときも上座お見合、物お多く給不申候様に可嗜、茶菓子済候はゞ、菓子盆栗鉢等勝手口へよせ置、扇子など残り不申様見はからひ、御出之節も躪上りより御先へ出る、罷出しに〈口伝〉御草履お直し、御腰物お取さし上、中腰懸へ参円座おなおし、腰懸のすえに縁ばなに手お懸踞ひ居申候、中立以後の作法も右之通りなり、主人貴人御相伴の時、だん〴〵仕形可嗜事、